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秋山瑞人文体模倣:序論2

序論2

時制と時間経過

「感情移入」をさらに効果的なものにする表現法として、秋山文体においては時制、特に時間経過への意識に特徴があると考えている。
さっそくながら典型例を以下に挙げる。

月ではイジメがはやっていた。
E.G.コンバット

朧はもちろん猫で、牡で、おいぼれで、最後のスカイウォーカーだった。
猫の地球儀 焔の章」

めちゃくちゃ気持ちいいぞ、と誰かが言っていた。だから、自分もやろうと決めた。
山ごもりからの帰り道、学校のプールに忍び込んで泳いでやろうと浅羽直之は思った。
イリヤの空、UFOの夏

E.G.コンバットの例はメインストーリーの第一文目、猫の地球儀イリヤの空はいずれも物語冒頭である。
秋山文体は物語を過去形で始める、と述べたいのではない。実際、例えば今手元で開いたE.G.コンバット2ndでは現在形で始まる。
述べたい点は、いずれにおいてもそれが「思い出」として描かれている点で共通している、ということである。

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秋山瑞人文体模倣:序論1

序論1

秋山瑞人とは

秋山瑞人を知らずにこのブログを読む人がいるのかわからないが、おそらく秋山瑞人の文章を知らずにこれを読んでもなにも面白くないと思うので、なにか一冊買って読んでみることをお勧めする。

端的に言えば、ここ10年で新作を 3つも 発表した人気ラノベ作家である。

これを書いている最中で一番新しいのは「SFマガジン700【国内篇】」に入っている「海原の用心棒」(書かれたのは10年前だけど)。もしなければ、「イリヤの空、UFOの夏」なら大きめの本屋にならあるはずなので、その1巻の冒頭10ページでいいから読んでみてほしい。E.G.コンバットの方が私は好きだけど。

話の筋自体は大したものではない。SFの名作として猫の地球儀を挙げる人がいるが、センスオブワンダーはゼロである。繰り返す。そんなものはない。それを期待して読んだであろう人の「SF名作と聞いたから表紙絵に我慢して読んだけどなんだこれ糞じゃねぇか」という感想を見るたびになんとなく申し訳ないといつも思う。展開もワンパターンで、だいたいクライマックスで主要人物の誰かが死ぬ(ミナミノに死ぬ気配ないしEGCは毎度踏みとどまってるしDBは絶対死ぬけど一応まだ死んでないという話はさておく)。あっと驚く見事などんでん返しなんかもさっぱりない。

では何がいいのか、褒めるようなところはあるのか。
少なくともラノベにおいて、最高峰の日本語を使う作家である。

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